森山達也ソロアルバム『ROLLIN’ OVER』好評発売中!
1985年以来35年振りにソロ活動を再開した森山達也(THE MODS)の待望のアルバムが発売!
こんな時代だからこそ心に響く歌詞とメロディ、そして唯一無二のヴォーカルを堪能して欲しい。
「GET YOURSELF」、Luv-Endersに提供した「恋することのもどかしさ」のセルフカバーを含む、全13曲を収録。
T.MORIYAMMER『ROLLIN’ OVER』
01. Slap Stick Show 試聴
02. Rollin’ Over 試聴MV
03. 約束の夜 試聴
04. In The Shadow 試聴
05. Boy Meets Rock’n’Roll (Good Rockin’ Days #2) 試聴
06. Crack Heart 試聴
07. ロードムービーに魅せられて 試聴
08. Baby It’s Alright 試聴
09. Get Yourself 試聴MV
10. You’re Not Alone 試聴
11. 恋することのもどかしさ 試聴
12. ライトを照らせ 試聴MV
13. Love Song 試聴
・発売日:2020年12月23日
・品番:RHCA-201
・価格:3,000円+税
・発売元:ROCKAHOLIC Inc.
・販売元:SPACE SHOWER NETWORKS INC.
※ROCKAHOLIC Official Goods Storeまたは全国の一般CDショップにて好評発売中!
(お近くのSHOPに在庫がない場合は品番(RHCA-201)をお店の方に伝えればお取り寄せ可能です。)
※配信リンク:https://ssm.lnk.to/ROLLINOVER
森山達也のインタビューが掲載されています。
OKMusic https://okmusic.jp/news/407710/
『ROLLIN’ OVER』LINER NOTES text by TAKASHI HONDA
強靭なビートと研ぎ澄まされたメロディ、そして唯一無二のグルーヴが生み出すロックンロールが「物語」になるには、誰にも媚びることなく自分たちを貫き通すタフなハートと、同じ夢を見る仲間が不可欠だ。たとえば、伝説の雨の野音から独り歩きをし、アンセムとなった「TWO PUNKS」だ。THE MODSがデビュー以前の博多時代、東京進出を目前にした中で交差する焦燥と野心の中、自分たちを貫くその先に光があることを信じた男たちの個人的な心情から生まれた歌だった。
1982年6月20日。その日の夕刻過ぎ、日比谷野外音楽堂は集中豪雨に見舞われていた。当時、野音のステージには屋根はなく、豪雨を弾く楽器は音が鳴らなくなった。ステージの4人は感電しながら、原始のリズムのごとく肉声を絞り出した。マイクの音は途中どんどん消えていった。しかし、誰ひとり帰ることのなかった観客席から響き渡る歌声は雨雲の向こうに突き抜けていった。そこにはロックンロールの真髄があった。その瞬間から極めて個人的な物語は、独り歩きを始め、すべてのファンが自分たちの物語として心に刻みこまれるようになった。
雨の野音が象徴するかのようにTHE MODSこれまでの長い道のりは決して平坦なものではなかった。それでもフロントマンとしてステージに立ち続ける森山は、かつてインタビューでこんなことを言っていた。「俺達は、俺達の音楽が浸透していくのに時間がかかると思っていた。はじめてLPを出すのに10年かかった。出してから長い時間がかかるのを覚悟していた…」と。このコメントから今に至るまでも長い長い時間が経過した。しかし、そのもっともっと前から森山の物語は始まっていたことを、僕らはこのアルバムを通じて改めて知ることになる。
2020年。新型コロナウィルスの感染拡大。緊急事態宣言で静まり返った街。まさに有事といっても過言ではない状況の中で盟友KOZZY IWAKAWAとのパートナーシップのもとドロップされた森山達也35年ぶりのマキシシングルT.MORITAMMER名義の「GET YOUR SELF」。これに続き僅か3ヶ月のインターバルでリリースされたアルバム『ROLLIN’ OVER』では、現在のTHE MODSが始動する遥か昔に森山が描いた心象風景が描かれている。KOZZYとの共作「Boy Meets Rock’n’Roll」だ。「悪魔と踊るさ もう戻れない…」十代の森山少年がロックロールとコネクトした瞬間の煌めきと、その先にある焦燥が、ジョージ・ハリスン直系のKOZZYのギターに誘われるかのように森山の歌が転がりだす。それは時空を超えた物語だった。そして、本作ではここを起点とし、人生の中で熟成された森山のリリックとメロディが全13曲。今の時代を映す鏡となってドロップされた。
リリックについて記すのであれば、森山はTHE MODSの歌については、常にピストルに弾丸を込めるように言葉を選んでいると思う。自らの身体に染みわたり、決して他人事ではない事象のみをテーマをビートに乗せ歌い続けてきた。これがTHE MODSのロックンロールだ。だからこそ、代弁者にはならず、メッセージソングにもならない。ファンは自分たちのものとして心に刻み込んでいる。今回のソロアルバムでもそのスタンスは変わらない。しかし、弾丸を込めるような言葉の選び方は、絹糸を紡ぐような繊細さに変わっていた。そしてTHE MODSの音楽に内包されている強靭さとは違った、弱さ、脆さをもさらけ出し、それでも道標となるべくライトを照らし続ける男の一途さ、優しさが描かれている。
4曲目に収録されている「In The Shadow」で森山は歌う。「In The Shadow 俺はJoker Kingにはなれないサダメさ 影の中に光を求めて…」自己の心情を投影するリリックもさることながら、今まで見せることのなかった森山の歌声は、ロックンロールという領域を遥かに超え、表現者という言葉では括ることのできない存在感を打ち立てている。この曲に関してKOZZYが興味深い言葉を寄せてくれた。
「森さんとしては、ストレイ・キャッツの『おもいでサマーナイト』みたいにさらりとやりたい意向だった。でも、そうはさせないよね。もっと濃く!もっと歌いこんで!そんな自身をさらけ出すような歌が欲しかった。ボーカルがオーバーロードして歪んでいるけど、知ったこっちゃない。これが森さんの本気の歌、パフォーマンスだと思い録音は止めなかった。普通のエンジニアならクビかもね(笑)」
シンガーとしての森山を知り尽くしたKOZZYらしいエピソードだ。信頼を寄せ合うふたりならではのやり取りが積み重なりレコーディングは進んでいった。
このように、不退転のロックンロールバンドのフロントマンとして戦い続けた男が、心の奥底にしたため、多くの人が閉塞感に苛まれている今を映し、希望へと導くリリックとメロディが、ロックンロールの伝道師、KOZZYの手腕によるサウンド・メイキングが施されてゆく。KOZZYが特に意識したのは、パンク以前の音作り、音の在り方だという。ロックが試行錯誤してた頃のサウンドを意識して構築し、余計な装飾はあえて施さない。必要最低限の音を積み重ねてゆく。つまり、引き算の美学だった。そんなバンドとは違ったスタンスだ。例えるのであれば、ビートルズの解散が表明された70年、アップル・レーベルよりリリースされたジョン・レノンの『ジョンの魂』やジョージ・ハリスンの『オール・シングス・マスト・パス』のような自由な発想のもと、森山のパフォーマンスを最大限に引き出すことに成功した。
森山の音楽の起点のひとつが、アメリカ南部で生まれ、大西洋を渡り、大英帝国を経由し博多に届いたロックンロールであるとするならば、その原石は極めてアーシーでプリミティブなものだ。しかし、海を越え様々な解釈が施されると、原石は研ぎ澄まされ強靭なビートに生まれ変わる。まさしく、THE MODSのビートがこれだ。ロックンロールはこれまでの歴史上、様々な血が入ることにより、転がり続け、継承されていった。森山もまた、独自の解釈を施しロックンロールをクリエイトしていった開拓者のひとりだ。しかし、このアルバムに内包されている森山の紡ぐメロディは、ロックンロールの歴史を俯瞰しただけでは語りつくすことはできない。それは十代でロックンロールに出逢った時の衝動であり、THE MODS以前にキャバレーの箱バンとしてR&Bを唄い続けた頃、体に染み付いたバック・トゥ・ベーシックな音楽との向き合い方であり、長きにわたる活動で熟成されたシンガーとしての凄みでもある。35年ぶりのこのソロアルバムでは、そんな森山の生き様、音楽の旅を体現している。
そして最後に。今回のソロアルバム制作のプロデューサーとして手腕を振るい、すべての楽器の演奏に携わった盟友KOZZY IWAKAWAのことを記さなくてはならない。このアルバムのレコーディング作業がすべて終わった時、彼はこんなことを話してくれた。
「何をやっても上手くいかない若いだけの自分を引っ張って、ここまで連れてきてくれたのが森さんだった。『お前にはロックンロールがあるやろ!』って泣いている僕をいつも励ましてくれた。だから僕ができることはこれしかないと思っていた。演奏して録音する。音楽を作ることって、アーティストにとって一番重要なことなのに、そこに特化したロックンローラーはいない。そう思って長い間精進してきた。今でこそ殆どの楽器の演奏ができ、レコーディングの機材や技術にも精通しているけど、もちろん最初からできたわけじゃない。ド根性で努力したよ。この席なら勝ち取れると思って。森さんが『こういう音にしたい』って言えば、『はいよ!』って吉牛ぐらいのテンポで出せる。だから、完成後に森さんから『自分がずっと作りたかった、自分が聞きたかったような良いアルバムが出来たよね!』と言ってくれた時は本当に嬉しかった。これが僕の夢のゴール地点だった」
1988年、自身のバンドROLLIEでTHE MODS日比谷野音公演のオープニングアクトを務め、1991年、スカーフェイス・レコーズ設立の際にはTHE COLTSとして同じ舟に乗る。以来、ずっと森山の背中を見て、同じ夢を見て、行動を共にしてきた。森山の夢はKOZZYの夢だということは察するに余りある。森山はそのKOZZYにすべてを委ね、彼の所有するスタジオROCKSVILLE STDIO ONEで音を熟成させていった。スタジオ内にあるハンブルグ時代のジョン・レノンのポスターに見守られ、数々のヴィンテージ楽器に囲まれ、ふたりきりで秘密を分かち合ってゆく。そしてふたりにしか成しえることのできないアルバムが完成した。そう。このアルバムに散りばめられたふたりの思いを忘れてはならない。
さあ、幕は開いた。T.MORIYAMMER、KOZZY IWAKAWAふたりの物語の世界にようこそ!